WORK IN PROGRESS その6|耳を街にひらく 前編

ヨコク研究所+MUESUM+吉勝制作所は、予測しえない出来事や偶然性を受け入れながら、目の前の出来事に反応することで新たな思索へと導くような“リサーチ手法のプロトタイピング”を実験・実践しています。ここでは、そのプロセスをご紹介。

「採集」を通した音づくりの実験

山形の森と山に入り「採集」を行った私たちは、そこで拾い上げたさまざまな素材(石、きのこにはじまり、木肌の質感、風景、視点、構え方なども)をもとに、脚本から美術素材までイチから制作。アニメーターのmoogabooga・高野さんとの共同制作を経て、本プロジェクトのコンセプトを非言語的に伝える超短編アニメーション映画が生まれました。

仕上がった音のないアニメーションを眺め、場面場面の音を想像していくなか、音づくりも「採集」からはじめられないかと考えました。山形の森と山に行かずとも、普段何気なく歩いているまちのなかにも、チカチカと光るものがあるかもしれない。そうして、アーティストの角銅真実さんとともに、コクヨのオフィスがある品川のまちへ、「音の採集実験」と称して繰り出したのです。

photo: Kohei Shikama

2022年12月某日、冬のさわやかな陽射しの下、コクヨのオフィスから品川埠頭へ向かう道中で、まちの音をレコーディング。工場の機械音、鳥のさえずり、ボラが群れで泳ぐ川の音、枯葉を踏み締める音などを通じて、私たちはそれまで気づかなかった品川の姿を再発見することになりました。さらに、面白い音が鳴るもの、品川を象徴するもの——草木の皮から、釣り竿、ゴムの破片まで、植物や人間と縁が切り離された、一見ゴミにも見えるものをさまざまに採集しました。

photo: Kohei Shikama

ーー こんなに近くに鳥がいる。あそこ。
ーー ああ、スーツケースの音か。
ーー この金属音いいね。高い。消火栓だから品質がいいのかな。この金属。
ーー けっこうバスのエンジン音って響きますね。
ーー これ、食べれる草じゃない?
ーー え?! 文字落ちてる!! 標識?! 東京っぽい!!

photo: Kohei Shikama

それをこすったり、振り回したり、叩いたり……。私たちが演奏家になりきって採集物を再解釈することで、それは楽器へと変貌していく。採集物から音を見出す楽しさ。その音から、まちの情景や、かつて所有していた人との物語が立ち現れるような想像の広がり。音採集には、自分たちが思っていた以上の、喜びが隠されていました。

photo: Kohei Shikama