WORK IN PROGRESS その10|非言語と言語の往復運動
ヨコク研究所+MUESUM+吉勝制作所は、予測しえない出来事や偶然性を受け入れながら、目の前の出来事に反応することで新たな思索へと導くような“リサーチ手法のプロトタイピング”を実験・実践しています。ここでは、そのプロセスをご紹介。
七連続鑑賞会をひらく
「超短編アニメーション映画『Digest The World もうひとつの臓器』七連続鑑賞会」の会場は、当時完成して間もないコクヨ東京品川オフィスTHE CAMPUS「CORE」。身の丈を超える超大型LEDディスプレイのあるホールで約2時間、アニメーションの連続鑑賞を行います。プログラムは、直前まで準備と更新を重ね、以下のような流れとなりました。
鑑賞①まっさらな気持ちで
鑑賞②青と白と緑のポタージュ––内臓を感じながら
鑑賞③真っ暗闇で感覚を研ぎ澄ませて
鑑賞④音を味わうビスケット––咀嚼音とあわせて
鑑賞⑤身体を使ってアテレコしながら
鑑賞⑥アテレコした音と映像をあわせて
鑑賞⑦思い思いの場所で
photo: Kohei Shikama
当日集まった50名弱の鑑賞者とともに文字通りまっさらな気持ちで最初の鑑賞を終え、受付で配布した野帳にその所感や気づきを書き込む。そして次の鑑賞へ。小桧山聡子さんによる青と白と緑のポタージュを飲み、胃のなかで色が混ざり、内臓に触れる感覚を意識しながら鑑賞。そしてまた野帳に記録する。
鑑賞へと至る非言語的な体験とそれを受けて言語化する小刻みな往復運動を通して、アニメーションを咀嚼していくプロセスをその場にいる人たちとともに行う。当日初めてGRASPの活動に触れる鑑賞者の困惑と緊張感は、7分ほど(もしくはそれよりも長い)の真っ暗闇を体験した鑑賞③あたりを最高潮に、その後の角銅真実さんによる鑑賞者全員を巻き込んだ即興アテレコ(鑑賞⑤)で完全にほぐれ、笑い合い、感想を言い合う朗らかな雰囲気へと変化していきました。この日の様子は、映像作家・玄宇民さんによる記録映像としてまとまっています。