Vol.1|未熟さを味わう

未熟であることは、更新可能であること

「今から皆さんに体験していただくのは、未熟さを楽しむ人生ゲームです。あなた自身の人生を歩むも良し、あなた以外の人生を楽しむも良し。ゲームを通して、様々な予想もしなかった出来事が起こります。その出来事を受け入れるのか、受け入れないのか。これまでに選ばなかった道や、保留してきたことを育てるのか。抱えきれなくなったときに、それをどのようにして扱うのか。選択はあなたの中にあり、あなたはまだ、何にでもなれる。それではゲームを始めたいと思います」

和田さんのやさしい語り口から始まる「未熟さを味わう人生ゲーム」は、手話通訳士としても活動している和田さんの経験から生まれました。

このゲームは自分の水脈を探す遊びであり、未熟さは自身の更新可能性です。未熟さは決してネガティブなものではなく、その扱い方次第でどちらにも転びうる。人生ゲームという方法を介して、自分自身のようでいて他者でもある人生を遊びながら生きてみる。ときに思いがけないハプニングが起こり、このゲームでは人生そのものもまっすぐには進みません。

直線的かつ唯一つの人生ではなく、もしかしたらあり得たかもしれない人生を、自身の未熟さとともにその変容可能性、更新可能性とともに味わってみましょう。自己語りではないからこそ、自分の人生を見つめ直すことができるのかもしれません。

 
 
つづく第3回は、2人目のレジデントとして迎えた野口竜平さんとのプロトタイピングをご紹介します。彼が制作と実践を続ける蛸みこしを自律協働の装置と捉え、テーマは「共鳴」、舞台は大分県別府市と品川です。
→ 自律協働のエクササイズ Vol.2|共鳴を運ぶ蛸みこし  
 
 
 
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和田夏実 Natsumi Wada

インタープリター。ろう者の両親のもとで手話を第一言語として育ち、視覚身体言語の研究、様々な身体性の人たちとの協働から感覚がもつメディアの可能性について模索している。LOUD AIRと共同で感覚を探るカードゲーム《Qualia》や、たばたはやと+magnetとして触手話をもとにした繋がるゲーム《LINKAGE》など、言葉と感覚の翻訳方法を探るゲームやプロジェクトを展開。東京大学大学院 先端表現情報学 博士課程在籍。同大学 総合文化研究科 研究員。2016年手話通訳士取得。《an image of…》《visual creole》 “traNslatioNs – Understanding Misunderstanding”, 21_21 DESIGN SIGHT, 2020