WORK IN PROGRESS その3|答えを定めない表現・メディアづくりの模索

ヨコク研究所+MUESUM+吉勝制作所は、予測しえない出来事や偶然性を受け入れながら、目の前の出来事に反応することで新たな思索へと導くような“リサーチ手法のプロトタイピング”を実験・実践しています。ここでは、そのプロセスをご紹介。

身体感覚を育むプロセスを共有するために

自らが望む未来社会の姿を考えながらウロウロする私たちの目の前に、「もしかしたら、この道のりは、“リサーチ手法のプロトタイピング”の実験・実践なのかも?」という仮説が現れました。

正しくて強度ある答えを探していくよりも、それぞれの方法で多角的に思考し、省察し、分析し、反芻していくこと……。そんな、ある種の個人的な実践こそが、「こうなったらいいな」という未来の兆しを捉えるための身体感覚を育んでいく(のかも?)。

この身体感覚を育むプロセスを、さまざまな人たちと共有するため、これまで私たちがウロウロしながらも積み重ねてきた思案・議論をもとに、読み手が追体験できるリサーチの記録・コンテンツの制作を試みることにしました。

目の前の会話やテーマと向き合うことがひとつの推進力となる本プロジェクト。そのフローから、“リサーチ手法のプロトタイピング”の研究方針とも言うべき4つの項目が浮かび上がってきました。

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01|山や森のなかでの「採集」のように目的発見型のプロセスを恐れない
02|つくることを通して考えるプロセスを大切にする
03|ものごとを非言語的(レンマ的)に理解する方法を探る
04|実感を伴う経験や言葉の断片をつなぎわせて考える

研究方針・姿勢 2022年10月27日作成
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同時に、共有するための方法(コンテンツのフォーマット)についても熟考しました。
私たちが普段接している言語的な理解のあり方だけでは漏れてしまう部分を、非言語的なコミュニケーションによって掬いあげられないか。そして、非言語的な理解のあり方・伝え方を設計する上で重要なのは、そのメディウム(メディア)です。

議論の末に選んだフォーマットは、「アニメーション映画」。
アニメーション映画であれば、「答えをひとつに定めない情報伝達の手法」と「読み手・受け手がそれぞれの視点でそれぞれの考えをもつときのインスピレーションになること」、また「非言語的に伝えること」が同時にクリアできると考えたのです。

大きな方向性が定まり、物語の構想づくりをスタートしました。
構想の手がかりとなったのは、これまでの会議で出てきたキーワードです。

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① 自らの関心、実体験に基づいたエピソードから引き出された思考や記憶にも拠りどころを置いてみる。 
 ex)異界に通じていそうな水の湧く岩場での体験

② 人間の視点のみに頼らない。他者の視点も取り入れてみる。
 ex)有機化合物を分解する微生物の視点

③ 一人一個性に限定しない。誰かのふりもできるし、誰かになることもある。
 ex)合体。ときに、複数の存在が重なり合いひとつの個性になるときもある

④ ストーリーは誰かの物語でもあり、私の物語でもある。当事者感覚をもつことができる表現を試みる。
 ex) 都市、街、田舎、森、海……GRASPメンバーの暮らす土地、思い出の土地をモチーフにする。

⑤ 言葉の定義や解釈からこぼれ落ちてしまったもの/しまいそうなもの掬うことができる姿勢をもっておく。
 ex)咀嚼しきれいないものを設定する(糞の存在)

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これらのことを落とし込み、物語の序章が出来上がりました。

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この世界の住人(精霊)たちには、人間にはない臓器がある。
それが「予告臓器(仮)」。彼らの世界にある物はたまにチカチカと光り出す。
その光は天啓か、虫の知らせか。何かを探しつづける住人たちには皮肉にも、そ
の「ヨコクの兆しの輝き」は見えない。

ひたすら何かを探し食べる住人たち。
チカチカ光らないものを食べてもウンコがでるだけ。
偶然か必然か「チカチカのもの」を食べて「予告臓器」で消化されると何かが起
こる!!
おならが出て空を飛べたり、道具が出てきたり、果物が出てきたり、誰かのチカ
チカが出てくるかも。
時には困難を乗り越え、時には道標が出てくる。

(なかにはチカチカ察知術と予告臓器消化法を極めた、賢者がいるとかいないと
か。)

設定アイデア「予告臓器」(仮) 2022年10月6日作成
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